理論と政策
vassal_hiroです。
前回は国際関係論(略してIR)の学問的位置づけや学問としての問題点(?)について書きました。
今回は、IRの分野でつかう理論はどのように位置づけられるのかについてわずかながら論じます。
だいぶ前に「理論とは何ぞや」のエントリーで理論の定義に関して書いていますが、ようするに
理論とは何らかの事象の原因とそのメカニズムを合理的に説明するための記述だということです。
もっとゆるい定義で理論を位置づけるのであれば、
理論とは国際社会を如何に捉えるのか、その着目の仕方となるのでしょうか。
社会科学とくに国際関係論の理論や研究の設計方法はこちらの本が詳しいです。
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という立場であり、中身は定性的研究についての考察です。
一方、後者は前者を批判する人たちが書いた本であり、定性的研究手法に重きを置いています。
ここまでは抽象的なことなので分かりにくいかもしれません。
そこで、より具体的に理論の意味を説明するため、ここでは中国について考えて見ましょう。
例えば、2020年の中国はどのように行動するのであろうか、について議論するとしましょう。
ある人は、こういいます。
「これまでの軍事的な近代化や軍事費の増大、また海外の基地の獲得に対する意図や空母保有の
検討などから、中国は西太平洋・東シナ海・南シナ海・インド洋の制海権を獲得するであろう。
そして、シーレーンの安全保障を中国が担うことで、中国は国際社会の中で優位な立場を獲得し、
そこから自国にとって有利な利益を引き出すであろう。」
この立場から政策を作る場合、今後中国を封じ込める施策となります。
一方、こう主張するひともいます。
「確かに軍の近代化など軍事的な拡張はあるが、中国は既に国際経済に組み込まれており、拡大的な
政策をとると海外の投資がこなくなり、中国の経済に深刻なダメージをあたえると考えられる。
そのため、中国は穏健な行動をとるであろう。」
この場合だと、中国をより国際経済に組み込み、中国を国際社会に関与させる政策になります。
この両者の立場の違いは、まさに理論の衝突であります。
なぜなら、理論とは、過去の事象から得られた結論を下にして現在あるいは未来を推論する機能も
持っており、その大元となる理論が異なるため、将来の見積もりとその処方が異なるからです。
このため、理論は対外政策とかなり親和性があります。
ただし、逆に言えば政策のための理論であるともいえます。
つまり、何らかの政策を実行するための、正当化の手段として理論を作ってしまうという危険性も
考えられるということです。過去のベトナム戦争のドミノ理論はまさにこの例に当てはまります。
また、理論の誤った推論で政策が作られるおそれや、理論が始めから存在することで現実の観察が
ゆがめられてしますことも考えられます。
ようするに、理論は政策のバックボーンとして極めて重要な意味をもつが、
その反面理論に引きづられて誤った政策を導いてしまう危険性もあるということです。