ネオクラシカル・リアリズム2

vassal_hiroです。
今月は出費が嵩んだので、所謂「巣篭もり」生活が続きます。まぁ、やることは山積みなので(?)全然オーケーな訳でありますが。ただ、ある意味味気ない生活かもしないと思ってしまうわけですよw
そういえば、何故だかOODAループ戦略論(意思決定論)を検索ワードにしてこのブログにたどり着かれる(?)方がいらっしゃるようで、なんだか申し訳ないです(汗)確かにOODAループをほんの僅か取り上げたことがあるのですが、その記述内容はお粗末なものでありまして・・・。目下、リアリズム論に注力しているので、ひと段落した後、OODAループについて書こうかと思います。


と、雑談はさておき。今回はちょいと長いですよ。

まずは、ネオクラシカル・リアリズムの登場について解説します。ネオクラシカル・リアリズムを最初に「発見」したのはギデオン・ローズ(Gideon Rose)です。ネオクラシカル・リアリズムは、ネオリアリズムやディフェンシヴ・リアリズムに批判的な論調をとるリアリストたちの議論の中から構成されていきました。ローズがネオクラシカル・リアリストとして特に取り上げている人物は、ファリード・ザカリア(Fareed Zakaria)とウィリアム・ウォルフォース(William C. Wohlforth)、トーマス・クリステンセン(Thomas J. Christensen)、そしてランドール・シュウェラー(Randall L. Schweller)です。

From Wealth to Power: The Unusual Origins of America's World Role (Princeton Studies in International History and Politics)

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The Elusive Balance: Power and Perceptions During the Cold War (Cornell Studies in Security Affairs)

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Deadly Imbalances: Tripolarity and Hitler's Strategy of World Conquest

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ネオクラシカル・リアリストの重要なテーマは、対外政策に与える相対的パワーの影響力に関してですね。ローズによると、この研究テーマにはこれまでに3つの大きな波があるようです。第一の波は、ロバート・ギルピン(Robert Gilpin)やポール・ケネディ(Paul Kennedy)、そしてマイケル・マンデルバーム(Michael Mandelbaum)らによる研究だそうです。彼らの研究は、いわゆる「大国の興亡」の議論であり、長期的な国際政治の変化を大国の経済力の高低で説明するものです。つまり、大国の相対的パワーは変化するものであり、その相対的パワーの基礎となる経済力と軍事力の間には、長期的な観点では相関関係がある ということです。ネオリアリズムでは相対的パワーの変化によるダイナミズムの分析がなされることが少ないが、ネオクラシカル・リアリズムの「第一の波」の研究では相対的なパワーの変化と国際政治について分析しているのです。
第二の波は、アーロン・フリードバーグ(Aaron L. Friedberg)やメルヴィン・レフラー(Melvyn P. Leffler)らによる研究で、相対的パワーの変化が国家の対外政策の変化を引き起こす過程について歴史的な記述を行なったものです。例えば、フリードバーグの主張は、適切な説明を行うためには単に相対的な能力の変化を考慮するのではなく、組織的、国内政治的な要因も考慮すべきであるというものです。また、レフラーの主張の最も重要なことは、能力の変化が対外的な脅威や国益、そして機会に対する政策決定者の認識を引き起こすことを明らかにしたことですね。
国際関係研究へのアプローチ―歴史学と政治学の対話

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そして、ローズがネオクラシカル・リアリストとして取り上げたザカリア、ウォルフォース、クリステンセン、そしてシュウェラーら「第三の波」のネオクラシカル・リアリストということです。彼らのネオクラシカル・リアリズムは、ウォルツのネオリアリズムに代表されるような国際システムを説明する理論ではありません。つまり、ネオクラシカル・リアリズムは厳密な意味において国際政治の理論ではないということですね。例えば、ザカリアも自身の理論は国際政治の理論ではなく、対外政策の理論であると捉えている節があります。


と、書いていると長くなってしまったので、エントリーを分割します。
ではでは。