ネオクラシカル・リアリズム1

vassal_hiroです。千葉まで戻ってきましたよ。地図でみると、結構な距離を移動していると感じますなぁ。

それはそうと、カウンタの数値「7000」が「0x70 0x00」と見えてしまい、云々・・・とか考えてしまうのは職業病ですねw


と雑談はさておき、いよいよ待望(?)のネオクラシカル・リアリズムですよ!!!!
といいつつ、具体的な理論の内容に入る前のイントロダクションをまずやっておきます。これまでのリアリズムの理論では、特定の国家の対外政策について説明しきれていないことが明らかになってきました。この欠点を補う形で、1990年代以降、国内要因を重視するネオクラシカル・リアリズム(neoclassical realism、新古典的現実主義)のアプローチが現れました。
それでは、なぜネオクラシカル・リアリズムが注目されるようになったのでしょうか。これまでのリアリズムの概説とともに解説しようと思います。
クラシカル・リアリズムは国内政治、あるいは個人から国際政治を説明することを試みたものであるため、同じ国際環境におかれた2つの国家の対外政策が異なるの理由は説明できたとしても、同じような国内状況に置かれた場合で国家の対外政策が異なることが説明出来ません。そして、ウォルツが指摘するようにクラシカル・リアリズムは還元主義であり、論理が循環してしまいます。このため、クラシカル・リアリズムは説明要素が豊富である一方で、方法論上の問題点を抱えていました。
また、ネオリアリズムは国際システムから国際政治の説明をこころみるアプローチであり、ウォルツの論理によってリアリズムが再考されました。特に、国際システムの構造に関する議論はシンプルであり、後の理論の発展に寄与したといえます。しかし、ウォルツ自身が主張するように、ネオリアリズムは国際システムの観点から、特定の国家の行動が説明できませんし、そもそも論として特定の国家の行動を分析することを念頭においていません。ミアシャイマーも、国際システム以外の要素が国家の行動を決定付けることがあると指摘しています。このため、ネオリアリズム、オフェンシヴ・リアリズムにも修正が必要になります。
ディフェンシヴ・リアリズムはネオリアリズムの修正として、ユニットレベルの変数を加え説明の範囲を広げる試みであったといえます。しかしながら、国際システムとユニットレベルの変数の間ではどちらの優先度が高いのか、またそれに加えてそれらの変数間の相関関係があいまいであるため、ディフェンシヴ・リアリズムは後付の議論になってしまいます。

一方、ネオクラシカル・リアリズムは国内政治、あるいは国際システムのみで国家の行動を決定付ける理論ではありません。また、ネオクラシカル・リアリズムは、国内政治の変数と国際システムの関係についても言及がなされており、ディフェンシヴリアリズムの問題点として批判された後付理論とは異なります。この様に、ネオクラシカル・リアリズムは、これまでのリアリズムに比べると国家の対外政策に対しての説明の幅を広げる形で理論が組まれています。

まとめますと、ネオクラシカル・リアリズム(あるいはネオトラディショナル・リアリズム、新伝統的現実主義)が登場した理由は幾つかありますが、最も重要な理由は、構造的から国際政治の説明を試みるウォルツのネオリアリズムは、厳密な意味で国際政治の理論(つまり、国際システムを説明する理論)であって、対外政策や特定の歴史的な出来事の説明する理論ではない、ということです。一方、ネオクラシカル・リアリズムは、国際システムを説明するような「国際政治の理論」ではなく、特定の国家の対外政策や個別の歴史的事情を説明するために構築された理論です。このため、ネオクラシカルリアリズムは、国家の対外政策や大戦略、戦争についての詳細な説明を試みるアプローチとして注目されているといえます。


次回、具体論に入れたらと思います。
では。