ネオクラシカル・リアリズム5

vassal_hiroです。
二週間放置しっぱなしでした。もう秋ですねー。日が暮れるのも早くなり、空模様も秋らしくなってきたような気がします。

ここ最近は国際関係論・戦略論の本を全然読んでいないのですが、仕事関係の本でまだまだ読み進めたいものが山積しているので、どんどん国際関係論・戦略論関係から遠ざかる日々です。まぁ、仕事関係が興味深いので、これといった問題はないのですが(汗

というわけで、今週末に購入したもの

オブジェクト指向でなぜつくるのか―知っておきたいプログラミング、UML、設計の基礎知識―

オブジェクト指向でなぜつくるのか―知っておきたいプログラミング、UML、設計の基礎知識―

割りと必要な知識なので、入門的な意味合いで購入しました。本来はこちら
オブジェクト指向入門 第2版 原則・コンセプト (IT Architect’Archive クラシックモダン・コンピューティング)

オブジェクト指向入門 第2版 原則・コンセプト (IT Architect’Archive クラシックモダン・コンピューティング)

を購入する予定でしたが、何事もウォーミングアップが必須ですよね!(多分



さてさて、本題のネオクラシカル・リアリズムです。国際関係論(リアリズム)シリーズは結構な分量になってきました。少ないながらも読者がいてくれる見たいでして、恐縮でもあり有難くもあります。

前回はネオクラシカル・リアリズムにおける国際システムについて論じましたので、今回はネオクラシカル・リアリズムと国内政治・個人について書こうと思います。長くなりそうなのでいくつかに分割して行きます。

ネオクラシカル・リアリズムと国内政治1 「ザカリア編」
ネオクラシカル・リアリストとして考えられているザカリアは、著書『富から力へ』において、19世紀後半のアメリカの拡大政策はディフェンシヴ・リアリズムで説明できないと主張しています 。

From Wealth to Power: The Unusual Origins of America's World Role (Princeton Studies in International History and Politics)

From Wealth to Power: The Unusual Origins of America's World Role (Princeton Studies in International History and Politics)

ザカリアによると、ディフェンシヴ・リアリストの理論では、アメリカが外国からの脅威に晒され安全保障上の懸念が高まる場合に、アメリカは対外的に攻撃的になるであろうと予測されます。しかしながら、当時のアメリカは対外的な脅威が必ずしも高かったといえないにもかかわらず、領土や権益を拡大しています。このため、ザカリアは対外的な要因だけではなく、国内政治にも着目しています。ザカリアの理論は、結果的に国内政治のダイナミズムで国家の対外政策について説明を試みるものですね。
ザカリアは、この時代のアメリカの拡大を説明できる理論としてステイトセンタード・リアリズム(state-centered realism、政府中心的現実主義)を提唱してます。この理論によると、政治家たちが国家のパワーではなく政府のパワーの相対的な上昇を認識した場合、彼らは対外的な国益を拡大する政策を採用するであろうと予測されます。ここで注意すべき点は、ザカリアは政府(state)と国家(nation)を区別して議論していることですね。
ザカリアによると、政府とは中央政府を、国家とは政府のコントロールによって変化できる経済、社会、そして国民を内包するより広い存在を意味してます。そして、政府のパワーとは、国家のパワーと政府の強さの関数であり、政府が強ければ強いほど国家のパワーから能力を引き出せるのである、ということです。ザカリアによると、政府のパワーは4つの指標から測定されます。それは、政府の責任の範囲、政府の自律性、国家の富から徴収する能力、そして意思決定機関の凝集力です。これらの指標がいずれも高い場合、政府のパワーは強く、対外的な拡大政策をとる傾向が高いという理論がステイトセンタード・リアリズムなんですね。
ここまでの流れをみて分かるかと思いますが、ステイトセンタード・リアリズムはネオリアリズムに比べると理論の簡潔性を犠牲にしてます。一方、ネオリアリズムのような国際システムのみで説明する理論は考慮すべき要素を極力少なくするように設計されています。このため、理論を使って予測をすることが複雑な理論に比べ容易です。しかしながら、ザカリアは理論の簡潔性を犠牲にして理論の運用が難しくなる欠点を引き受ける代わりに、簡潔で厳密なリアリストの対外政策理論を作り出す国際システムの強制力と、相互作用する国内の変数を理論に導入しています。何故なら、政治家は国際システムの強制力に影響されるだけでなく、政府の構造の結果による制約条件にも直面するからですね。ここで注意していただきたい点は、ザカリアの理論と国内政治のみで説明を試みる「第二イメージ論」のアプローチとは論理構造が異なるということです。これにより、還元主義批判をさけることが可能になり、理論の正当性を守ることができたといえます。


というわけで、次回はこの続きから。
ではでは。