ネオリアリズム1

vassal_hiroです。
先日のランニングのおかげで、筋肉痛であります。


前回はクラシカル・リアリズムについて書きました。今回はネオリアリズムについて書こうと思います。
結論から言うと、2つのリアリズムが異なる理由は、端的にいうと分析のレベルが違うという点にあります
少し前に国際関係論における分析のレベルについて書きました。
分析のレベルは簡単にまとめるとこんな感じになります。

第一イメージ論「人」―個人の性格、認識
第二イメージ論「国内政治」―政党、官僚組織、社会、利益団体、圧力団体など
第三イメージ論「国際システム」―物理的な国家の相対的パワーバランス


クラシカル・リアリズムは基本的には第二イメージ論あるいは第一イメージ論であり、国内政治から
国際関係を説明する傾向があります。つまり、国内の政治状況(コンテクスト)などから説明することが
間々あるということです。また、論理の出発点が人間が持つ本性(権力欲、あるいは恐怖・名誉・利益)です。
もちろん、中には国際システムについて言及することもありますが、基本的には人間や国内政治を中心に
語ることが少なくないということです。


一方、ネオリアリズムは第三イメージ論です。つまり、国際システムから国際関係を説明する理論です。
Kenneth N. Waltz, Theory of International Politics (Reading, MA: Addison-Wesley, 1979)
ネオリアリズムを語る上で、この本は欠かす事の出来ないものです。

Theory of International Politics

Theory of International Politics


ネオリアリズムとは何か
ネオリアリズムのいう「国際システム(International System)」とは、端的に行ってしまえば国家が
おかれている環境だと思っていただければ大丈夫です。ケネス・ウォルツによると、国際システムは

  1.構造(Structure)
  2.相互作用するユニット(Unit)←ようするに国家(ただし大国

から構成されるようです。そして、構造とユニットについて3つ特徴があります。

  1.国際政治の構造は国内政治の構造と異なり集権的ではなくアナーキー(anarchy)
  2.国際政治のユニットである国家の機能は同質性をもっている
  3.国際政治の構造の変化とは、システムを構成するユニットの能力の分布
   (distribution of capability)が変化すること

要するに、国際システムの構造はアナーキーであり、国家は同質であるため、国家の違いとはパワーの
大小のみだと単純化されてます。イメージとしてはビリヤードの玉が大きいやつと小さいやつがあり、
国際構造が変化するとは、ビリヤードの玉の大きさが相対的に変動することだということです。


そして、国際システムのユニット、つまり国家に関して3つ前提を置いてます。

  1.国家は自己の保存を目的とた単一のアクターであり、究極的には全世界の独占を目指す
  2.国家はその目的を達成するために2つの手段をとる
     ⇒「経済的・軍事的・戦略的な能力を高める動きである内的な行動」
     ⇒「自己の同盟の強化と拡大あるいは敵対側の同盟を弱め縮小させる対外的な行動」
  3.システムの中に2つあるいはそれ以上の国家が共存している


ここまでの議論をまとめると、ウォルツの理論では2つの前提条件が設定されてます。

  1.国際システムはアナーキー、自助のシステム ←助けてくれるものはいないということ
  2.国家は生き残りを目指す

このため、国家は生き残りを目指さざるを得ず、結果的にあたかも神の見えざる手(ここが重要)のように
バランス・オブ・パワー(略してBOP)が発生するという理論です。ただ、ウォルツが言うには国家はパワー
の最大化ではなく、現状維持を求めるということだそうです。

端的にまとめると、ネオリアリズムは国家の物質的な相対的パワー分布から国際政治を説明する理論です。
この理論によって、なぜ国家が安全保障を求めるのか論理の循環が無く説明できたことになります。
また、社会科学として非常に洗練されており、リアリズムを復興させた意味で多大な貢献があります。


次回はネオリアリズムの問題点について書きます。
では